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執筆者の写真ic-Myn(いくみん)

スタイリッシュ転売。

 今はいわゆる小売業の仕事をしているのだが、そうすると時々明らかな「転売ヤー」に遭遇するタイミングがある。




 この間など、コアな層に需要がある微人気商品を運よく入荷できたもんで、深く考えずネットにも出品したらものの数分でほぼ完売してしまった。


「一家に一台」な類のものがそうなっちゃったので、3つや4つ買っていった連中はまあ十中八九転売狙いなのだろう。


 その時は大急ぎで価格を調整したり、一人あたりの注文数を制限するなどしたらパタリと「嵐」は収まったわけだが、なにぶんこのフィーバーと沈静化を数十分の間に一人で処理する羽目になったのだ。


 良くも悪くもだいぶ記憶に残ってしまった。




 こんな転売屋なるものの存在は昔から知っていたのだけれど、いざ対峙するとその不思議さが改めて際立ってくる。


「あんなコアな商品の需要をどこでキャッチしてきたんだ?」


「なんで調整に無頓着だった店を見つけて狙い撃ちできるんだ?」


 気になって、「転売 情報」やら「転売 やり方」などでググってみると……


 ……結論からいえば、私の望むような答えは得られなかった。


 結局「SNSやショッピングサイトでこまめに情報を集めましょう」という、半ば根性論のような回答しかそこにはなかったのである。本当にそれが全てなのだとしたら、それはそれでちょっと凄いと思う。




 で、ここからは元々の興味とは違った話になるのだけど。


 いくつかのサイトを見て私が驚かされたのは、いずれも「転売は商品知識と市場予測とコミュニケーション能力と多少の度胸が必要な『新時代のビジネス』だ(要約)」といういたってクリーンなイメージを掲げている点だった。サイト管理者や執筆者も、スーツ着た顔出し写真をアイコンにしてたりするし……。


 言っちゃ悪いが、私はこれまで転売というと一部の傾奇者(カブキモノ)がこっそりやる裏稼業のようなイメージで捉えていたのだ。このイメージは払拭され……いや、払拭されちゃっていいのか?


 とにかくこう、ずいぶん明るく夢と希望に満ちた商売として紹介されているのだ。むしろ、専門の技能をもった人間たちの極めてスマートな営みにすら見えてくる。


(※転売ビジネス自体は大昔から存在します)




 ……ん、ひょっとして転売ビジネスってスタイリッシュでカッコいい?




 本気で一瞬、そう思わせる「何か」を感じ取った私がいた。




 ブラウザ閉じて、数秒後。


 いやいや、やっぱり変だ。

 日頃ちゃんと問屋やメーカーから商品仕入れてモノ売ってる身からすれば、彼らは完全に「企業と消費者の間に乱入してくる連中」であることに変わりない。

 このマイナスイメージが変わることはない。


 しかしながら、いちおう勉強にはなった。


 結局、「悪どい連中のせいで善良な販売店と消費者が困っている」という構図に捉えているのは「困ってる側」の人間だけで、要は個々人の主観でしかなかったのだ。

 みーんな「自分が悪どい」なんていう認識はないわけで、一方から悪どいと思われてた方も当人からすれば至って真剣に「仕事」をしているってわけだ。そして、意図的にそう思わせようとしてる勢力もあるってわけだ。

 たぶん万人に突き刺さるような結論がハッキリ出ない限り、双方の議論は永遠に平行線で分かり合うことがないのだろう。




 ほんとにややこしいことになったら、もう行政ないしは司法に訴えるしかないよね。


 あと、これを教訓に、小売店の人間としてはやっぱり気を付けていきたいと思う。




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ic-Myn(いくみん)

 某大きな湖がある県の忍者の里に住むのんびりや。

作曲と楽器演奏と落書きが好きで、いちおう本業もそれ関係なのだが、それぞれの好きの配分は時期によってけっこう異なる。

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